韓屋の裏側|自然とともに生きる韓国の住まい

韓屋に流れる、もうひとつの時間

韓屋の門
門をくぐって足を踏み入れると、
ふっと空気が変わる。
先ほどまで歩いていた通りの音が、
遠く感じる。

韓屋(ハノク)とは、
朝鮮半島の伝統的な木造住宅のこと。
なかでも瓦屋根をもつ家屋は、
静かな佇まいを今に伝えています。

韓屋に囲まれた中庭。
足元の土。
ゆるやかに弧を描く瓦屋根。

韓屋は、“時間の入り口”なのかもしれません。

かたちには、理由がある

韓屋の屋根は、必ずしもまっすぐではありません。

瓦屋根は両端がわずかに反り上がり、
静かに、でも堂々と、空へと弧を描いています。
宮廷建築では、その美しい曲線が、ひと際目に留まることでしょう。
韓屋の屋根宮廷建築の美しい屋根

しかし、もともとは装飾ではなく、
雨を流し、風を受け流し、重さを分散するため、
厳しい冬と湿った夏を越すための、長い時間の中で生まれてきた形。

そこに「美」が宿る。
木の質感を生かしながら、
人の目に自然に映るよう、わずかに整えられています。

構造が、そのまま美しさになる。
韓屋の静かな魅力は、そこにあります。

自然とともに築かれた家

中庭を囲む韓屋
韓屋は木や土といった自然の素材でつくられています。
釘をほとんど使わず、木を組み合わせる建て方も、その知恵のひとつ。

韓屋の中心には「マダン」と呼ばれる中庭があります。
建物がそれを囲み、光と風を取り込むー
内と外で、ゆるやかにつながる空間です。

寒い冬には、かまどの熱を床下に巡らせたオンドルで部屋を暖め、
暑い夏、壁は湿気を吸っては放つ。
気候と向き合いながら、
風の通り道、土のぬくもり、
ときには風水の考えも取り入れながら、韓屋はつくられてきました。

韓屋は、自然に逆らうのではなく、
自然とともに呼吸する家なのです。

今も息づく韓屋

韓屋は、今も息づいています。
安東河回村ソウル益善洞
たとえば、
安東河回村のように、
今も人々の暮らしの中で使われ続けている家。

そして、
ソウルの益善洞のように、
古い骨組みを残しながら、新しい時間を受け入れている場所。

かたちは変わっても、
木と土と石がつくる呼吸は、そのままです。

低い軒の下をくぐるとき、
私たちは、過去ではなく、
今も続く時間の中へ足を踏み入れているのかもしれません。

にこまるツアーの視点

韓国を旅していると、思いがけない場所で韓屋に出会うことがあります。

韓屋は、単なる古い家ではありません。
風の通り道を考え、土のぬくもりを生かし、木とともに呼吸する家。

次に韓屋を訪れたときは、形を見るだけでなく、空気に触れてみてください。
そこには、目に見えない時間が、静かに重なっているのです。

全州慶基殿

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