健康や美容にもいい五味子(オミジャ)。
韓国では五味子茶にして、よく飲まれています。その美しい色合いや美味しさから、人気の高い伝統茶の一つです。
今回は、その五味子の効能や、ちょっと珍しい五味子ワインについてもご紹介します。
■伝統茶として親しまれている五味子
五味子は小豆大の赤い実で、日本では朝鮮五味子(ゴミシ)として、乾燥させた実が販売されています。
赤みが鮮やかなものほど新鮮で、日数が経つほどに黒ずんできます。自然のものは9月中旬ごろから収穫され、乾燥させて店先に並ぶのは10月ごろからです。この時期に採れたものが1年間出回ります。
この乾燥五味子を、1リットルの水に50g程入れておくだけで、ピンクの美しい色が広がっていきます。これに蜂蜜や砂糖などの甘味料を加えて飲みます。これが五味子茶です。
また、あらかじめ蜂蜜やシロップに五味子の実を漬けたり、粉末を混ぜたりしたものも販売されています。お湯や水に溶かすだけで飲めますし、ヨーグルトにかけて食べても、その甘酸っぱさが絶妙にマッチして、とてもおいしくいただけます。
■ 五味子の効能
ところで五味子は味の良さだけでなく、生薬として、いくつものすばらしい効能を持っています。
まずは「五味」の名の通り、五味子には酸味、苦味、甘味、辛味、塩(鹹)味がすべて含まれいます。
韓国の陰陽五行説の考え方では各味に対応する脾、肝、腎、心、肺の機能を調和させる働きを持つと考えられ、大変バランスがよい薬材なのです。
五味子のベースは甘さを含んだ強い酸味ですが、体調によって、微かな苦味や辛味など味の感じ方が変わり、対応する症状を緩和する作用があると言われています。
「酸」(酸味)・・・肝臓。ストレスの蓄積。目や筋肉にも関わる。
「苦」(苦味)・・・心臓。貧血気味。血液循環や自律神経の働きも絡んでいる。
「甘」(甘味)・・・脾臓。老廃物の蓄積。消化器系全般にかかわる。
「辛」(辛味)・・・肺。 体の活力不足。水分代謝や免疫機能にもかかわる。
「鹸」(塩味)・・・腎臓。下半身の冷え。ホルモン、生殖器系、免疫にも関わる。
実際に、日本でも漢方の生薬として販売されており、口の渇きを抑え、鼻や喉などの粘膜に潤いを与える効果があり、風邪予防や咳止め、花粉症の薬としても用いられています。
粘膜に潤いが行き届くと、さらに脳にも潤いを与えて、認知症にも効果があるとか!?
また五味子には非常に多くのビタミンCや、ビタミンEも含まれ、体の酸化予防や美肌効果もありますし、またリンゴ酸も多く含まれ、ストレスの緩和や滋養強壮、疲労回復の効果 もあるそうです。
また最近では、ウイルス性の肝炎の肝臓機能回復にも効果があるという報告もあります。
様々な効能を持つ五味子は、子供からお年寄りまで日常的にいただきたい健康食品。美味しくいただきながら、体調のバランスまで整えてくれるのです。
(治療目的で服用する場合には、必ず専門の漢方薬剤師にご相談ください。症状、体調に合わせた処方が必要です。)
■聞慶の五味子ワイン
慶尚北道の聞慶(ムンギョン)は、ソウルと釜山を結ぶ中間地点に位置し、李氏朝鮮時代には地域と首都をつなぐ主要な関所でもあった峠道「聞慶セジェ」で有名です。
その聞慶は、五味子の生産地としても有名で、全国五味子生産量の45%を占めています。ソウルの市場では、価格の安い北朝鮮産や中国産も多く出回っていますが、ここ聞慶の五味子は良質で、価格は少し高め。最近は有機栽培の五味子も多く作られています。
先日、手配したツアーでは、この五味子を使いワインを生み出した李鐘玘氏のワイナリー「オミナラ」を訪問してきました。オミナラの敷地内にも、100%有機農法で栽培される五味子の農園があります。この五味子ワイン製造にいたるドラマや行程をお話していただきました。
オミナラの創業者、李鐘玘氏は、2006年末、27年間勤務したグローバル大手酒造会社の役員を辞め、五味子の故郷、聞慶に工場と研究所を設立。五味子の変わりやすい魅力的な色を保ち、酸味と苦味を調和し、特有のスパイシーな香りを引き出すための挑戦が始まります。
ヨーロッパ留学時代から憧れていたロゼスパークリングワインを開発しようと、数百回の
試行錯誤を繰り返していきます。ある日、サンプルから泡が激しく出ていることを発見。更に研究を重ねていった結果、ようやく五味子スパークリングの完成への手がかりをつかむことができました。それはまるで気難して繊細な五味子がやさしく本音を打ち明けるようだったと言います。
しかし、五味子スパークリングワインを瓶に詰める段階で、再び壁が立ち塞がりました。
瓶の中で2次発酵させ、十分な圧力のスパークルを作る技術、かつ、その圧力を損失させずに副産物を除去する技術、この二つの技術が同時に揃わないと五味子ワインは成り立ちません。困難でありながらも「面白い挑戦」だったそうです。
300余年前、フランスシャンパーニュのエペルネー近郊のオーヴィレール修道院で失明しながらもシャンパンを作ったドン・ペリニヨン修道士を師と仰ぎ、エペルネーを数回訪問しながら、世界的なシャンパンメーカーと共にパズルゲームを完成させていきました。
2010年、五味子ワインの製造方法の特許を取得し、2011年、3年熟成したローゼスパークリングワインをようやく完成させました。こうして、20年前の留学時代から憧れていたローゼシャンパンと肩を並べる出来のオーミローゼは誕生しました。
工場では、ワインの瓶づめ体験や試飲が用意されています。さらに希望者にはマイワインを作ることもできます。
通常のワインは1年半、スパークリングワインは3年という熟成期間を置き、出来上がります。「時間をかけて、ゆっくりとマイワインを味わう喜びは、最高だ」と李氏は言います。
今回は瓶詰体験のみでしたが、3年という月日をかけて、マイワインを育ててみたいものです。